小さな庭づくりのすすめ後編:ローメンテナンスのお庭づくりのポイント

あると楽しく、暮らしが豊かになるあこがれの「お庭」。でも、お手入れが大変なのでは?管理にコストがかかってしまうのでは?というイメージがあるのも事実です。今回は、お庭のメンテナンスは実際どうなの?というところと、できるだけメンテナンスのかからないお庭づくりのポイントについて考えてみます。

コラム前編はこちら:

室内からの庭の眺め

お庭のメンテナンスの実際

ショールーム「木のここち」のお庭は、完成してから一冬を越したところです。これまでに行ったメンテナンスの内容を振り返ってみます。

1)水やり

植栽後1年程は、しっかりと水やりが必要です。造園屋さんから教わった水やりの方法は、毎日あげるのではなく、乾燥してきたなと感じたらたっぷりとやるという、メリハリをつけたやり方です。私たちのお庭の面積は広くないので、ホースを伸ばして散水すれば朝夕に5分ずつ程あれば完了します。ちなみにうちの水やり当番は、社長です。

2)落ち葉掃除

秋頃にしなければならないのは、落ち葉の掃除です。庭に植えたサルスベリ、トサミズキ、ヤマコウバシはいずれも落葉する樹種ですので、その足元に落ちた葉っぱを拾い集めました。しかし、木がまだ大きくないこともあって落ち葉の量が少なく、掃除の頻度としては週に1回、期間は1~2か月ほどでした。量が多い時はブロワーで飛ばして吹き寄せながら、細かいところは手作業で拾っていきます。実際には私たちの庭木よりも、隣の敷地に生えている大きなエノキの落ち葉が風の強い日に大量に降って来て・・・その掃除が一番大変なのでした(苦笑)

「落葉樹は落ち葉が出るから大変、常緑樹がいい」という声をききますが、落ち葉のシーズンは秋の一時期だけですし、小さい木ならそれほど大変とは感じませんでした。また、落葉する前の赤や黄色の紅葉がとてもきれいで、その点では常緑樹よりも楽しみがあるといえます。

3)草むしり

田舎暮らしの大変さの一つが、草との戦い。地域の行事で草刈りに駆り出されることも多い中、自分の庭まで草刈りするなんて気が進みませんよね。木のここちの庭では、植栽しない場所は防草シートと砕石を敷き詰めているため雑草はほとんど生えず、また植栽の周りもバークで覆っているので、今のところ写真のように点々と草が生えてくる程度です。草ひきは1週間に1度程度、草が小さいうちに抜いておくようにしています。まだ夏を越していないので、植物の成長が旺盛になるこれからのシーズンにどうなっていくか観察を続けたいと思います。

この他、ツバキの花がらを取ってあげる作業を時々しましたが、一冬過ごしてみたところほとんどお手入れが要らなかったなという感想です。これから木が大きくなるにつれ剪定や施肥、虫や病気対策が必要になってきそうですが、造園屋さんと相談して行っていきたいと思います。

ローメンテナンスのお庭づくりのポイント

ここまで、お庭のメンテナンスはあまり大変ではなかったというお話をしてきましたが、その背景にはお手入れの要らない庭づくの工夫が隠されています。

1.植栽の箇所と本数をしぼる

緑に囲まれたお庭を作りたいと、家の周り中にあまりに多くの樹木を植えてしまうと、その分お手入れも大変になってしまいます。そこで、植栽する箇所をしぼって、効果的に配置してあげるのがポイントです。

「木のここち」は緑に囲まれているように見えますが、主な植栽は3か所のみ。玄関前(シンボルツリーのサルスベリ)、その奥(トサミズキ)、道路側の庭、です。このように3か所ほどを三角形に配置すると、バランスがよく奥行が出て、少ない本数でも緑に包まれているように見えます。メインの樹木の足元に低木や草花をまとめて寄せ植えのようにすることで、日々のメンテナンスも集約して行うことができます。また、樹木のある植栽は、季節ごとに花を植えて埋め尽くさなくてはならない花壇よりも、かえって何も植えなくても形になっているので楽に管理できるといえます。

ちなみに建物の後ろに見えるのは、もともと生えていた隣の敷地の木。その緑の景色もお借りすることで、より立体感が出ていますね。

植栽しないところは砕石や石、枕木を敷き詰めることで、ほぼノーメンテナンスの仕上げとしています。このように植栽する箇所を管理できる数にしぼることで、お手入れがぐっと楽になります。

2.自然樹形のまま植える

「お庭の手入れは大変」というイメージが根深いのには、昔のお庭の作り方が関係していると思われます。昔ながらの日本建築の庭といえば、マツやツツジ、生け垣のある日本庭園でした。樹形を整えて毎年剪定しなければいけない庭木や、丸い形や塀の形に何度も刈り込まなければいけない生け垣は、たくさんの労力をかけて維持されるものでした。そのため、手間もお金もかかるというイメージがあります。そもそも日本庭園のルーツは江戸時代の大名庭園だといわれ、大名たちが来客に見せるために競い合って作った庭を、庶民が同じように作り維持するのはなかなか大変なことです。

近年では日本建築が少なくなり、外構も生け垣で囲まないオープンな形が増えたこともあり、自然な樹形のままの木を植えても似合うお家が多くなりました。

一般的には丸く刈り込んだ樹形を思い浮かべるツツジも、写真の右側に見えるように、自然に山に生えているような姿で植栽してあります。これなら、自由に枝葉を伸ばしてもらい、伸び過ぎたら剪定する程度で済みそうですし、自然でのびのびとした樹形がかえって面白さと親しみやすさを感じさせます。樹木も人間もありのままに過ごせるリラックスしたお庭が、現代の暮らしにも合うのではないでしょうか。

3.石と苔で遊ぶ

植栽を少なくすると、余白が大きくなって持て余してしまいそうです。そんな時は、石やオブジェを置いて表情をつけるのはいかがでしょうか。石ならメンテナンスもほぼ要りません。木のここちの庭で使った材料は、元々会長の自宅の庭にあったコレクションで、祖父の代から集めていた庭石や石臼、謎の壺(?)などを引っ張り出してきて、造園屋さんに自由に置いて遊んでいただきました。

新しい庭に古い石臼は合わないのではと思いましたが、これが意外といい味を出してくれて、苔むした古い石があることでお庭がまるで昔からあったような醸成感を演出してくれています。

また、シンプルな丸い川石も置き方次第でオブジェとして使えます。これは造園屋さんが遊び心で置いてくれた3つの石ですが、何を表しているかわかりますか?答えは、私たち夫婦と娘の3人家族なんだそうです。森の中にいる小人か妖精かお地蔵さんのようにも見えて、かわいらしいですよね。もし子どもが増えたら、また石を置いていけばいいそうです(笑)素敵なアイデア。

石のほかに、こんな風に古い鬼瓦のパーツを埋め込んでユニークで渋いデザインにすることもできます。もしご自宅やご実家に眠っている石材があったら、庭づくりに取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、地面に苔を敷き詰めるのもおすすめです。苔があることで雑草を防ぎ、保水効果や保温効果も発揮してくれるすぐれもの。苔は土に根を張らないので、移動させたり補修するときにも楽々です。苔庭はハードルが高いイメージもありますが、そのお手入れといえば植物と同様に水やりをすることと、落ち葉が積もったら取り除いてあげる事。落ち葉により日が当たらなくなると枯れてしまうためです。意外とローメンテナンスで、むしろ草むしりの手間を省いてくれるおすすめの植物です。雨の後には苔の色がとても鮮やかになり輝くようになるので、雨の日の楽しみも増やしてくれます。

ローメンテナンスにするためには、プロのデザインと施工を

このように、子育て中や共働きの忙しい世代にも楽しみながら管理できるローメンテナンスのお庭は、ポイントを押さえた作り方で実現することができます。今回私たちが実際にショールームの庭づくりをしてみて実感したことは、お庭を作った後にローメンテナンスにするためにも、最初はプロによる設計と施工をお願いするのが大切だということです。

少しの植栽でも効果的に見せるためには、バランスの取れたお庭の設計が必要です。自然樹形を楽しめる植栽にするには、高知の気候に合った丈夫な樹種を選び、適した土にしっかりと植えることも大切です。また、ちょっとした石やオブジェの配置も、プロの造園屋さんにお願いすることでとてもセンス良く、私たちが思いつかないようなアイデアで楽しいお庭に仕上げていただきました。

そもそも私(有加)は、昔から植物は好きなのになぜかすぐに枯らしてしまう性格で、庭づくりにはちょっと苦手意識がありました。そんな私でも、造園屋さんによる設計と施工をしていただき、管理の方法もきちんと教えていただいたことで、自分なりにお庭を楽しむことができています。また、最初に造園屋さんから「最初に植えた植物の中には、枯れてきたり上手く育たないものも多少あると思います。だんだんと環境に馴染んだ庭になっていきますよ。」と言っていただいたので、あまり頑張りすぎずに自然の成り行きに任せていこうと、ゆったりした気持ちになることができました。何か困ったことがあれば気軽に相談できるお庭のプロが近くにいることも心強いです。

井上建築の家づくりでは今後も、無理なく楽しめる小さなお庭づくりもご提案していきたいと思います。カーポートやアプローチなどの外構とセットでお庭も考えておくと、計画や施工もスムーズにできます。弊社のお庭も参考にご見学いただき、季節ごとに変わる表情をお楽しみいただければと思います。