お家の形や外観を決める時、屋根の形もどのようにするか決めなければいけません。屋根の形は、お家の見た目のデザインだけでなく、雨をしのぐ機能や家の耐久性、コストにも関わってきますので、最も大事な部分の一つです。
屋根の形にはどんな種類があって、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?代表的な6つの屋根スタイルについて解説します。
日本の伝統的な3つの屋根スタイル
雨が多い気候の日本の家づくりでは、昔から、雨をしのぐ屋根の形はとても重要でした。日本で歴史的によく採用されてきた屋根の形は、以下の3つです。
1. 切妻(きりづま)
ザ・おうちの形といえばこのイメージではないでしょうか。2枚の屋根が合掌した形で、シンプルですっきりした印象です。三角形に見える面を「妻面」といいます。
2. 寄棟(よせむね)
4枚の屋根が合わさり、四方すべてを屋根でおおった形です。写真のお家の2階部分が「寄棟」の屋根になっています。
3. 入母屋(いりもや)
最近の新築住宅ではほとんど見られませんが、日本建築や寺院建築で見られる伝統的なスタイルです。切妻と寄棟が合わさったような形で、3つの中では最も複雑な形です。
いずれも、雨をしのぐために地域の気候に合わせて発達してきた形で、日本の気候風土に合った形です。
さて、この3つの中で、最も「雨」に強い屋根の形はどれでしょうか?
答えは「2.寄棟」です。雨水を四方に流すことで、壁に雨が当たってつたいにくくなり、建物が傷むのを防いでくれます。また、四方からの風も受け流しやすいので強風や台風にも強い形です。
「1.切妻」は、屋根がかかっていない妻面の2面の壁が雨に濡れてしまうのが弱点ですが、屋根の三角形を強調したり、建物を大きく見せる効果があります。(高知の伝統的な建物にはこの妻面に水切り瓦がついていて、それにより雨を受け流しています。)
「3.入母屋」は、妻面から屋根裏に風を通して湿気で屋根が傷むのを防ぐようになっています。西日本を中心に発達したスタイルで、瓦屋根や茅葺屋根で多く見られます。また見た目が豪華であることから、お寺や神社建築でもよく見られます。
このように伝統的には3つの屋根の形がありますが、最近の新築では、切妻or寄棟のお家がほとんどでしょう。切妻も寄棟も、昔からあるスタイルなんですね。
近年トレンドの新しい屋根スタイル
さきほどご紹介した伝統的なスタイルに加えて、最近の住宅でよく見かけるのが「片流れ」「陸屋根」、そして「招き屋根」です。
4. 片流れ
片流れは文字通り、1枚の屋根が片方に向かって流れています。スタイリッシュに見えるデザイン性、太陽光発電パネルをたくさん載せられること、屋根の部材や樋が減らせてコストカットになる点がメリットです。そのため、デザイナー住宅やローコスト住宅でよく採用されています。
5. 陸屋根(ろくやね)
水平な屋根の形です。RC造のビルなどではお馴染みですが、最近は住宅でも陸屋根のキューブ型のお家も出てきました。シンプルなデザイン性や、屋上が利用できる点がメリットです。
6. 招き屋根
切妻屋根をくずしたような、2枚の屋根が互い違いになった形です。この招き屋根は、ロフト部分の天井を高くし、窓もつけられる点が特徴です。デザイン的にも、一味違った個性を出すことができます。
このように最近流行の「片流れ」「陸屋根」「招き屋根」は、シンプルなデザインが好まれていることや、限られた建築面積で屋根裏や屋上を活用したいニーズ、コストカット、そして太陽光発電の普及という背景があって、選ばれるようになっています。
トレンドの屋根スタイルの注意点
トレンドの屋根の形にはいろいろなメリットがありますが、逆に注意したいデメリットもあります。それは何と言っても「雨漏り」のリスクです。
中でも片流れ屋根は、雨漏りを起こした住宅のうち75%が片流れ屋根だったという調査もあります。特に弱点になるのが頂上部で、屋根の軒天から伝って流れてくる雨や、強風で吹き上げられた雨などが、屋根と壁の取り合い部分に侵入するリスクが高くなっています。これは、招き屋根の高い方の屋根も同じ構造になっています。
また陸屋根についても、水を流す勾配がゆるく、水の侵入を防ぐのはルーフィングなどの防水部材に頼っているので、部材が劣化してくると雨漏りの危険性が高まってきます。
また、片流れと陸屋根は、外壁の劣化も心配です。片流れは、屋根で覆われている壁が1面しかありません。陸屋根はそもそも軒がないことが多いので、降ってきた雨はすべて壁にかかり、壁を伝って流れていくことになります。そのため、年月が経つと壁の黒ズミや苔がついたり、劣化していく原因になります。
そのため私たちは、太陽光発電パネルを載せる場合やどうしてもコストを抑えたい場合を除いては、この3タイプの屋根はあまりおすすめしていません。
屋根の形は「見た目がかっこいい」「流行りだから」で安易に決めてしまうことのないように、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで、検討しましょう。
昔ながらの屋根の形には理由があった
そもそも「家」とは、雨風をしのぐ屋根をかけることから始まっています。歴史をたどれば縄文時代の竪穴住居は、掘っ立て柱に屋根をかけただけの三角形の空間。住まい=屋根そのものでした。
伝統的にある切妻や寄棟といった屋根の形は、雨を受け流し、壁の劣化も防ぐ効果がもっとも高い形です。歴史的に見て日本の家には片流れ屋根や陸屋根がほとんどなかったのには、理由があったんですね。
防水シートなど建築材料が進化したからこそ最近トレンドの新しい屋根の形も可能になりましたが、材料の力だけに頼らずに家の形でカバーするとなお安心です。
それに、オーソドックスな切妻や寄棟の屋根は年月を経ても飽きがこない安心感のある形ですし、三角の屋根が並ぶことで街並みも美しくなると思うので、やっぱり伝統的な屋根スタイルをおすすめしたいところです。
まとめ
- 伝統的な三角屋根はもっとも雨に強く、飽きが来ないデザイン。
- トレンドの屋根はデザインやコストだけでなく雨漏りリスクも知ったうえで選びましょう。