安芸市本町にある浄土宗西山禅林寺派・妙山寺様の供養堂が施工いたしました。
1Fは車庫および倉庫、2F部分はお位牌や阿弥陀如来像を安置する木造2階建ての建物です。
心安らかに語り合える木の空間
室内は、お参りに訪れた方が心穏やかに過ごせるよう、無垢材や自然素材を使って仕上げました。
エントランスホールにはヒノキ一枚板のベンチに、本山(永観堂)のある京都の地で育った北山杉の磨き丸太を添えました。
2Fに上がった場所には待合ホールを設けました。窓からは本堂の屋根とお庭が望めます。
祭壇室は無垢フローリング(国産クリ)、天井材(国産ヒノキ無垢材)、木製建具(国産スギ)と木の素材でまとめ、壁仕上げには土佐和紙を用いました。
約13畳の広さですが、家族単位でお参りすることができる落ち着ける空間となっています。
お位牌を納める位牌室は、床材は調湿効果のあるスギの無垢板張り、収納庫の棚は高知県産ヒノキ材で制作しました。木の香りに包まれる空間です。
仏様を身近に感じられる祭壇デザイン
「仏様を身近に感じてほしい」との住職様のご意向に沿って、祭壇廻りを設計させていただきました。造り付けの祭壇は通常よりやや低めで、椅子座にすることでよりいっそうお厨子を近くで見られる高さ関係となりました。床も祭壇横までフラットな造りになっています。
後ろには明り取りのFIX窓を設けることで、全体的に明るい印象です。
祭壇の装飾は住職様が誂えられたものですが、シンプルな羅網や蓮の照明など、モダンで親しみやすい印象になっています。
祭壇背面の壁は、藍染めを施した杉板で仕上げました。本物の藍染めならではの深いブルーが、装飾を引き立てています。
バリアフリー性と耐震性
近年は参拝者の方もご高齢になっていることから、バリアフリー性に配慮した設計としました。
入口へは手すり付きのスロープを設け、また玄関ドアは3枚建てで車いすも出入りできる有効開口としました。奥行きのある1Fエントランスホールは、2Fに上がることが難しい方がここでお参りができるようになっています。
耐震の面では、設計段階で専門家による構造計算を行い、建築基準法の1.5倍の耐震性を確保しました。一方で、工法は木造軸組在来とし、構造材は一般的な規格の無垢材(高知県産材)を活用しています。
伽藍と街とつながる植栽計画
外構は、参拝者のための十分な駐車スペースを確保しながら、街に緑をもたらす植栽を計画しました。
アプローチには、お釈迦様の逸話にちなんでヒメシャラ(姫沙羅)をシンボルツリーとした1畳ほどの植栽を。通りすがる方も足を止めて眺めている、癒しの場となっています。
隣の敷地には駐車場を造成しましたが、その一角にも立体的な植栽を設けました。
庭師さんの遊び心が、訪れた子どもたちの目も楽しませています。
植栽により、本堂の豊かな緑ともつながりが生まれ、一体感を感じることができます。
この供養堂が、訪れる方や街の方々とつながる心の拠り所となれば幸いです。
設計・施工:㈱井上建築
構造計算:キノアル一級建築士事務所
造園:はぎの造園