井上建築ショールーム「木のここち」は、洋室の18畳LDKになっていますが、その一角に杉の磨き丸太を立てたちょっと変わったスペースがあります(写真右側)。
これは、日本建築や和室で昔は当たり前にあった「床の間」の役割を持つスペースです。
床の間とは、心を表すギャラリースペース。
床の間とは、もともとは書院造や茶室で自慢の茶道具や掛け軸、季節の花などを飾った、いわば住宅の中のギャラリースペース。お客様や大切な人に向けたおもてなしの心を表す飾りつけの場所であり、床の間に飾る掛け軸の絵柄などを冠婚葬祭のシーンや季節に合わせて変えることで、場の雰囲気を演出する仕掛けがありました。
最近では和室を設けるお家が減ったことや、床の間に割けるほどスペースに余裕がないことなどから、日本の暮らしの文化であった床の間は姿を消しつつあります。すると、季節の飾りやお花、お気に入りのアートを飾る場所がお家の中にどこにもなくて、かえってゆとりのない暮らしになってしまうという問題も出てきます。
そこで私たちがご提案したいのが、丸太をたった一本立てるというシンプルなデザインで、スペースを最小限に抑えつつ気持ちを表現するギャラリースペースをつくることです。
木のここちの”床の間ギャラリー”は、実際に床の間によく使われている代表格の木「北山杉」を使っています。これは京都で育てられている銘木で、スギの樹皮を剥いて丸太の状態で磨き上げて仕上げる素材。なめらかで光沢のある美しい表面が特徴です。四角形や直線が多い住宅の中で、丸みを帯びた素材があることでやさしい印象にもなります。
たった一本でも凛とした存在感がある、さすが床柱になる木です。
床の間ギャラリーの使い方、四季折々
ここからは、木のここちの床の間ギャラリーの様子をご紹介します。
いつもの様子
季節を通じて、特にイベントがない時など通常の飾りはこちらの掛け軸。高知県在住の画家・石見陽奈さんの作品で、日本画ですが洋室にもよく合う繊細なタッチで描かれています。高知の身近な山の風景に見え、季節を問わず楽しめるとても素敵な作品です。
やっぱり床の間には掛け軸が一番合っていいなぁと思えます。
クリスマスの飾り
床の間のイメージとはかなりギャップがあるかもしれませんが、これも正解です。昔、実際に京都の町家で床の間にクリスマスツリーを飾っているのを見たことがあって、「季節やおもてなしの心を表す」という使い方が確かにされていて感心したことでした。
てぬぐい用の額縁に飾ったのは、北山杉の冬景色を描いた絵柄です。日本の山の風景なのに、クリスマスの雰囲気があって不思議です。
ひなまつり
床に置ける飾りもいいですね。ひなまつりの時には、雛人形を一段。それに、ひなまつりの歌を書いた掛け軸を合わせました。造り付けでなくこのように置くだけの台なら、使わないときには撤去できるので普段はお部屋のスペースが広々とします。
端午の節句のかざり
5月に向けては、またてぬぐいの出番。こいのぼりの絵柄を染めたものを額縁へ。額の中身を変えるだけで季節感が出る便利なてぬぐいは、まだまだコレクションが増えていきそうです。
掛け軸やてぬぐいだけでなく、洋風の額縁や現代アートも似合うことでしょう。
飾る心を大切に、自由に楽しんで。
床の間ギャラリーがあることで、日々の”飾る楽しみ”が増えました。今月は何を飾ろう、と考えてみたり、お客様が来る予定があればその人の顔を思い浮かべながらしつらえたり。お花をいただいた時などもきれいに飾ってあげることができます。
和室がなくても、たった一本の丸太で演出できるギャラリー。心からおすすめします。
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