GW連休中の祝日、5月4日は「みどりの日」です。この日は毎年、みどりに感謝し親しむ機会としてGo to Forest!という森林浴イベントを全国同時開催しています。
私たちも地元・安芸市の有志メンバーで企画開催し、今年で3年目。3回目となる森林浴を行いました。今年の開催場所は、安芸市伊尾木にある東山森林公園です。スタッフ含めて18名で子どもから大人までさまざまな職種の方に参加していただきました。
東山森林公園はいくつもの散策コースがあり、さまざまな植物が植えられた広々とした公園です。この日はお天気にも恵まれ、新緑が美しく映えました。午前10:00に駐車場に集合して、自己紹介と軽い準備体操から。
今年のテーマは「植物に親しむ」ということで、森林を散策しながらさまざまな樹木・植物をご紹介しました。ガイドは、わたくし井上有加です。大学時代に森林科学科で習った植物を思い出しおさらいしてこの日に臨みました!
森の遊歩道に入ってすぐ、道端にたくさん生えていたこちらの葉っぱ。まずは、香りを嗅いでみてください・・・どんなにおいがしますか?
「んー?何か嗅いだことがあるようなにおい」「ゴマ油みたいな香り」「くさい」・・・などいろいろな反応があったこの葉っぱは、その名もクサギという樹木の葉。何とも言えない香ばしいようなクサいような香りが特徴ですが、この葉っぱを山菜として食べることもあるそうです。また、実は鮮やかな青色で、染め物に使うこともあります。
森林浴とは森林で心と体の癒しを得る体験のことですが、なぜ森の中で癒されるのかその理由としては、森林の中に漂うフィトンチッドという樹木が発する成分が、人間にとってリラックス効果があること。また、日常を離れて五感を使うことで副交感神経が優位になることなどが挙げられています。
私たちは普段、情報の80%以上を視覚から得ています。朝から晩まで、スマホやPCの画面を見て目を使いすぎていませんか?森林にあるさまざまな刺激を楽しむことで、普段忘れているほかの感覚(嗅覚、聴覚、触覚、味覚)も使ってみましょう。
森の中を少し歩くだけで、ちょっと注意深く見るとさまざまな刺激があります。
立ち止まって耳を澄ませてみると、なにやら頭の上からブンブン・・・という羽音が。たくさんのクマンバチが集まっていたのはエゴノキの花。足元にもたくさん落ちていた花を拾って、今度はどんな香りがするのか嗅いでみましょう。
エゴノキの花の香りを「純粋な蜂蜜のにおいがする」と言った感覚のするどい参加者の方がいました。実は蜂蜜の原料になる蜜源植物として大切な存在なのです。
色々なみどりに紛れて、ヤブムラサキの葉を見つけました。毛深くて、触るとモフモフ気持ちがいいです。秋になると紫色のツブツブの小さな実をつけます。園芸品種はムラサキシキブと呼ばれています。
こんな風に、ただ植物の名前を覚えるのではなく嗅いだり触ったりして五感で感じると楽しいですね。
道沿いの日当たりがいい崖には、明るいグリーンのピースサインがいっぱい。これはウラジロという大きなシダの新芽たち。ウラジロはその名の通り葉っぱの裏が白色をしていて、お正月の鏡餅の下に敷かれます。森の中ではV字型の葉をとって、紙飛行機のように飛ばしてみるのも面白いです。
こちらも、シダの仲間。山菜でおなじみのゼンマイです。渦巻の葉が開くとこんな風に鳥の羽のような形になるんですね。
広場など開けたところに多く生えていたのは、サルトリイバラ。蔓にするどいトゲがたくさんあって、猿もひっかかってしまいそうです。高知県では、このツルツルした葉っぱにお餅を包んでこどもの日を祝います。関東ではカシワ、関西ではチマキザサで包むことが多いようです。
葉っぱには抗菌作用のあるものが多く、ビニールがなかった時代、地域によってさまざまな葉っぱで食べ物を包んでいました。
こんな風に、食と関係する植物はとても覚えやすいですね(笑)
後半は少し斜面を登っていき、尾根伝いにヤマモモの多い道を進みます。高知県の花にもなっているヤマモモは甘酸っぱい実がボタボタ落ちることでおなじみですが、とても大きく育ち迫力があります。この道はイノシシの通った跡がずっと続いていて、野生動物も利用していることがわかりました。ヤマモモやクリの実を食べているのかな?
ここまで約1時間半。斜面を上り下りして少し汗ばんできたところで、最後にクールダウンします。森林浴で一番人気のアクティビティは、森の中でこんな風に寝る「森ぼっこ」です。思い思いの場所を見つけてシートを広げ、目を閉じて耳を澄ませると、それまで気づかなかった色々な音が聞こえてきます。何種類もの鳥の声や、風の音、思ったより多く飛んでいる飛行機の音。まぶたを透かして木漏れ日もほんのり感じます。
全身の力を抜いて、10分くらい寝るだけで、もっと長い時間寝ていたような時間感覚になります。
ゆっくりと心身を休めたところで、今日の森林浴はおしまいです。今回歩いたのは広大な東山森林公園の中のごく一部のコースでしたが、五感を使ってじっくりと楽しむことができました。参加者のみなさんも気さくな方々で、終始おしゃべりの絶えないにぎやかな森林浴でした。安芸市の森のあたらしい魅力も見つけることができて、とっても楽しかったです!
この森林浴の企画やガイドの方法は、2020年に安芸市内の会場で行った研修で学びました。先生は、(一社)森と未来の小野なぎささん。全国、世界で、森林浴の種をまき続けています。私たちも森林の恩恵を受ける事業者として、森林浴をはじめさまざまな角度から森の楽しみ方をお伝えし、これからも地域の方を森へお連れしたいと思います。
次回はぜひ、ご一緒に。