田園風景を望む静かな場所に、二人と一匹暮らしのための20坪の小さなお家ができました。
外とつながる、土間リビング
玄関と掃出し窓へとつながる広いポーチは、土間リビングに直結しています。
約7畳ある土間リビングは、アウトドアチェアや雑貨を置いて、お家にいながらお外気分を味わえる空間。‟土間生活がしたい”というお施主様の希望を叶えた設計です。
窓やドアを開ければ外の新鮮な風が室内に吹きわたり、すぐにお庭へ出入りすることができてBBQの時なども便利です。
土間に作り付けた収納は、オープンタイプの可動棚。趣味の釣りやキャンプから帰って来て、そのまま道具やウェアを飾るように収納。土間なので多少の汚れも気になりません。
フロアと土間が一体になったLDK空間が、コンパクトながら広がりを感じさせます。
20坪のお家で、広々と過ごす工夫
限られた建築面積の中で、狭く感じない空間づくりのために、間仕切り壁やドアの数をできるだけ減らしました。洗面室は個室にせず、耐力壁をいかして目隠しをしながらLDKの一角におさめました。スケルトン階段も階段下を有効に使え、目線の抜け感を出せるのでコンパクトな空間にはおすすめです。
2階はドラム演奏などを楽しむためのフリースペースを広く取りました。そのために、主寝室は5畳半とコンパクトに。寝るためだけの個室空間は小さくても十分と考えました。
お部屋の大きさを変えずに広々と感じさせるには、視線を外へ向ける窓を取るのも有効です。特に眺めのいい東面には、印象的に風景を切り取る窓を取りました。土間リビングには遠くの山まで見渡せるFIX窓を。
浴室の窓は、開け放して湯船に座りながら外を眺められるよう、あえて低い位置にしました。型ガラスのため、閉めれば外から見えないので安心です。
暮らしを彩る木の素材
木が大好きなお施主様のお住まい。さまざまな表情の木を使いました。
1F床は栗の無垢フローリング(東北産)。天井には熊野産のヒノキ小幅板風羽目板。玄関を入って正面に見えるドアには、岡山県産の上品なスギ建具をあしらいました。
キッチンはオーク製(WOODONE)。造作の食器棚はタモ無垢材と集成材を使用しました。
キッチンのコンロ周りには、内装制限をクリアするためにガラス製垂れ壁を設置しています。火気使用室の内装制限は、平屋や2階建ての2階、IHヒーターの場合は制限されませんが、今回は2階建ての1階、ガスコンロも木の天井も譲れないということで、どちらも叶えるための対応になりました。
2F床は高知県産スギの無垢フローリングです。自然オイル仕上の無垢材はペットにとっても滑りにくく、クッション性やあたたかみがあってやさしい素材です。
外壁には、表情豊かな焼杉を張りました。将来の塗り直しなどメンテナンスを考慮して、南面の1F部分と下屋の上に絞って焼杉とし、その他の面は焼杉に合わせたブラックのガルバリウム仕上げです。
今回も、構造材は100%高知県産のスギ、ヒノキを使用しました。上棟の前に、お施主様と県内の木の産地を訪ねて森林や製材所を見学しました。実際にお家に使う材料に「家内安全」の願いとお名前をサインして、とても思い出に残るツアーとなりました。
小さくても、心豊かに暮らす。
家族構成や、限られた敷地面積、ご予算に合わせて、20坪前後の小さなお家づくりを希望されるケースもあります。小さいお家ほど設計の工夫が必要で、狭く感じさない空間の取り方や家事動線、収納などの検討が大切になります。そんなご要望にもお応えできるのは、注文住宅ならではだと思います。
また最近では、資材価格の上昇により住宅建設にかかる単価が高騰しています。さらに、大きすぎる家は日々のお手入れや整理整頓にかける時間、将来のメンテナンスにかかるコストも大きくなってしまうという懸念から、あえて小さなお家を選択される方も増えています。
建築面積が小さければ価格が抑えられ、その分の予算を使ってより上質な素材を選んだり、家事楽につながる設備を追加するなど、暮らしをより豊かにすることもできます。
小さく建てて、豊かに暮らす。そのような選択肢が、これからは広がっていくかもしれません。