健康と快適を叶える木の4つの効果:その1「香り」

「木の家」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?あたたかみのあるナチュラルな見た目、触り心地など、なんとなく快適で健康によさそうなイメージはありますよね。

自然素材である木、特に無垢材には、新建材にはない4つの大きな特徴・効果があります。住まいに木を使うことが健康や快適にどのようにつながるのか、わかりやすくご紹介していきたいと思います。

1つ目の効果は「香り」です!

スギやヒノキは‟精油植物”

先日、アロマテラピーの専門家の方にお会いする機会があり、その時に日本産精油についての書籍をいただきました。その中で、「日本産精油植物38種」が紹介されていたのですが、草花やかんきつ類に加えて、私たちが住宅に使っているさまざまな樹木も「精油植物」に数えられていました。アロマの原料になるということは、それだけ有用な香り成分がたくさん含まれていていると言えそうです。

樹木からとれる精油には、木の「葉」からとれるものと「木材」の部分からとれるものがあります。木によって、精油成分が葉に多く含まれていたり、逆に木材の方に多かったりするようです。

建築用材としてよく使うスギとヒノキの木材の香りについては、以下のような特徴があるそうです。

スギ

  • 揮発しにくいセスキテルペン類が多い。
  • 香りに鎮静作用があることが、脳波の測定で明らかにされている。落ち着いた気分の時に多くあらわれる脳波のα波を増加させ、脈拍を下げるリラックス効果がある。
  • ぜんそくやアトピーの原因となる室内塵に生息するダニ類の繁殖を抑制する。
  • 大気汚染物質であるNO2を吸着する。吸着率は含水率9%の時に最大になる。

ヒノキ

  • 香りには鎮静作用があることが脳波測定から明らかにされている。
  • 耐久性成分のテルペン類α-カジノールを含む。
  • 殺蟻成分としてα-カジノール、T-ムーロロール、ツヨプセンを含む。
  • 人の健康にかかわるカビや細菌に対しても抗カビ、抗菌作用を示し、クロコウジカビ、アオカビなどのカビ類、黄色ブドウ球菌、大腸菌などの細菌類の繁殖を抑制する。
  • ぜんそく、アトピーの原因となるダニ類の繁殖を抑制する。

(参照:「aromatopia」第169号 フレグランスジャーナル社)

このようにスギとヒノキいずれの香りも、人に対してはリラックス効果(鎮静効果)を発揮し、さらに人にとって有害なカビやダニ、細菌に対しては抑制する効果があります。また、建物に被害を及ぼすシロアリや腐朽菌に対する抵抗力も備えているのです。

木の香りは、住む人にとっては快適な環境を作り、建物自体も守ってくれる、まさに一石二鳥の効果を発揮してくれます。アロマオイルを使わなくても、木の家で暮らし呼吸することで毎日自然と木の香りの恩恵を受けることができるといえそうです。

スギやヒノキ以外にも、ヒバ、コウヤマキ、クスノキなども精油植物として紹介されており、同じく鎮静作用や抗菌作用に加えて、消臭効果のある樹木もありました。これらも昔から建築用材として水廻りなどに使われてきた木で、抗菌・防虫といった作用があることを昔の人たちも知って用いてきたのではないでしょうか。木の香り効果は、昔から家づくりの中でおおいに活用されてきました。

木の香りで、頭がよくなる?

勉強や作業に「集中している」というのは、どのような状態なのでしょうか?それは、緊張とリラックスのバランスが取れている状態であり、体をリラックスさせることで集中しやすくなるそうです。ある研究で、木の家と非木材の家でパソコン課題を複数の人が行った実験の結果、木の家の方が正答率が高くなりました。

実際に自律神経系の活動を測定すると、リラックスしている状態ではたらく副交感神経の活動が活発になっていました。また、課題を終えた後の疲労回復効果も木の家の方が高いことがわかりました。

(参考:木の家の健康を研究する会 )

このように、実際の研究でも確かめられたように、木の家では香りによるリラックス効果で集中力が高まり、勉強や作業がはかどるという効果があります。子どもの勉強や在宅ワークにとっても、木の香りがする家が適しているのではないでしょうか。勉強以外にも、好きなことに集中して取り組み、子どもの才能を伸ばすことにもつながりそうです。

木の香りは、ずっと続くの?

家に帰ってほっとやすらげるリラックス効果、そして勉強や趣味にも没頭できるなど、さまざまな効果が期待できる、木の香り。その香りは、時間が経っても香り続けるのでしょうか?

引用元:木の家の健康を研究する会 https://www.kitokenko.com/exp_01

その香り成分の量についても測定した実験があります。上のグラフのように、4年間実験したところ、香り成分の量は減らないということがわかりました。

また、木の香り成分は温度が高いと揮発するので、冬よりも夏の方が香りが強くなるということもわかります。季節により変化しながらも、木材は長い時間香り効果を発揮してくれます。

さらに、グラフの青色の非木材の家(新建材を使用)と比べてみると、無垢材を使った木の家の方が香り成分が約4倍も多くなっています。木の香り効果を感じるには、複合フローリングなどの新建材よりも、木本来の香りがする自然素材である無垢材を使用するのがいいでしょう。

木の香りを発揮させる木づかいと暮らしの工夫

木の塗装方法を選ぼう

木の香り効果を発揮させるためには、木材の表面から成分が揮発しやすい、いわゆる木が呼吸しやすい状態にすることが大切です。特に床材など内装材の場合は塗装をして仕上げることが多いですが、塗膜を張って木の呼吸を妨げてしまうウレタン塗装などよりも、浸透性の自然オイル系の塗装をおすすめします。または、天井など汚れが付きにくい場所は、塗装をせずに仕上げるのもよいでしょう。

木以外の香りに気をつけて

日々生活する空間は、木の香り以外にもさまざまな香りに溢れています。朝晩の料理のおいしい香りはもちろんのこと、せっけんや洗剤など化学薬品の香りにも私たちは日々触れています。

好きなせっけんやシャンプーの香りによって気分がリフレッシュすることもありますが、本来は不必要な香りやあまりにも強すぎる香りは、木の香りを感じる暮らしには少し合わないようにも思います。

たとえば、最近は洗濯洗剤にもさまざまな香りのする商品があり、服についた香りが長く持続するものもあります。しかし、そのような香料や化学成分に敏感な体質の人にとっては、気分が悪くなったり体調を崩す原因になることもあり、「香害」と呼ばれるほどになりました。体調に影響がないとしても、常に強い香りを吸い込んでいると、繊細な自然の木の香りを感じられないような嗅覚になってしまうのではないかと少し心配になります。

また、生活臭を消すための消臭剤や香り付きトイレットペーパー等にも、においを誤魔化すための香りが添加されているものが多くあります。この香りにも好き嫌いはありますが、においに香りを重ねてしまうのではなく、木の香りの抗菌作用や消臭効果を上手く利用して、本当に清潔で心地よい空間を作るという方法もあるのではないでしょうか。

合成香料は便利な反面、さまざまな副作用も懸念されています。化学成分に溢れた現代の暮らしを見直すためにも、天然成分である木の香りに触れることは、人間本来の感性を取り戻すことにもつながるように思います。

木の香りを感じてみよう

私たちの家づくりでは、木の香りがする無垢材をふんだんに使っています。内覧会やショールームに訪れた方は、お家に入った瞬間「木の香りがする!」と喜ばれます。

そう、木が香るということは、なんとなくうれしいものなのです。科学的根拠や色々な理屈も大事ですが、直観的に「いいな」と思える、それが木の香り。おそらく、嫌いな方は少ないのではないでしょうか・・・?

新建材の利用が増え、木の香りがするお家が少なくなっている昨今。木の香りがどんなものか、知らない方もいるかもしれません。まずは五感で木の家を感じてみることから始めませんか。