牧野富太郎博士ゆかりの樹木「ヤマザクラ」

高知出身の牧野富太郎博士をモデルにした連続テレビ小説「らんまん」がスタートしましたね。

初回の冒頭シーンは、私たちの住む安芸市にある「伊尾木洞」がロケ地になり、とても迫力ある映像でわくわくしました!伊尾木洞は国道から歩いてすぐで別世界を体験できるスポットなので、観光客の方にも楽しんでいただきたいですね。

ところで生涯で1,500種以上の植物を命名したという牧野博士は、もちろん多くの樹木も命名しています。その中で、建築に使われる樹種では「ヤマザクラ」も命名されたそうです。

ヤマザクラ Prunus pseudocerasus Lindl. var. jamasakura Makino

春の山を彩るヤマザクラ

ヤマザクラは、安芸市のあたりでは3月末~4月にかけて開花します。

この頃になるとあちこちの山で、淡いピンク~白色の花を咲かせているのでよくわかります。花がない時期は遠目に見てもわからないのですが、春には「こんなにたくさんヤマザクラの木があったのか」と気づかされます。

人里に近い山に普通に生えている樹木で、雑木林の中にほかの木に混ざって生えています。ソメイヨシノと違って、花が咲くと同時に葉っぱも出てくるのが特徴です。

近くの山にヤマザクラが咲くと、まさに「山笑う」という感じで、人間も春の喜びを感じて笑顔にさせられます。

ヤマザクラの木材の性質

ヤマザクラは、花が美しいだけでなくその木材も有用です。

ほどよい硬さがあり(比重0.62)、粘りがあり暴れにくく、なめらかな木肌をしています。そのため家具や木工品、版画の版木、和菓子の型などに重宝されてきました。

材の色はピンクがかって、年輪が目立たず、華やかさと重厚感の両方を感じられます。

木材までもが花のイメージのピンク色をしているなんて、可愛らしいですよね。

また、ヤマザクラのチップで燻製を作るととてもいい香りがつくので、燻製用チップとしても定番の木材です。

ヤマザクラの木材を使った住宅の事例

ヤマザクラの木材は、住宅の内装材(フローリング)としても使われます。

フローリングに使うと、華やかな印象のお部屋になります。年輪が主張しないのでインテリアになじみやすく、和にも洋にも合う色合いだと思います。

高級感があり、ほどよい硬さで傷が目立ちにくいので、リビングに使うのがおすすめです。

リビングから続けてキッチンの床にも。無垢材のあたたかみがあるので、お料理中も足が疲れにくく気持ちよさを感じます。

こちらは、井上建築ショールーム「木のここち」の洗面室。こちらにも、ヤマザクラの無垢フローリングを張って展示しています。

実際に見て、質感や踏み心地を感じていただけます。

井上建築では床材は国産無垢フローリング(広葉樹・針葉樹)を標準仕様にしていますが、ヤマザクラも通常のラインナップとしてお選びいただけます。どちらかというと女性のお客様に人気の樹種です。

ヤマザクラのフローリングの産地は、北関東~東北地方です。東北は広葉樹の生産が多く、まとまった量のヤマザクラが供給されていて、安定した品質の無垢フローリングを調達することができます。

古くから日本人になじみのあるヤマザクラの木も、お家づくりの際の選択肢にいかがでしょうか。

ヤマザクラの木は暮らしのすぐそばに

春にはかわいらしい花で目を楽しませてくれ、木材も人の生活に役立っているヤマザクラ。

高知では、高知県産のヤマザクラを使った木工品や木のおもちゃを見かけます。色合いにコクがあって肌触りがとてもよく、手元に置いておきたい木です。

身近な山に息づいているヤマザクラの木。時々は山の景色を眺めつつ、建築用材や暮らしの道具として生活に取り入れることで、自然とのつながりを感じられそうです。

朝ドラをきっかけに、私たちの生活と植物についても勉強していきたいですね。